瞑酩走

走り、酒を飲み、気ままに、寅さんのように。

修行走を終えて

24日 7,86k 35:45(4:33)昼休みラン


25日 7,87k 34:49(4:26)昼休みラン


26日 38,45k 身延山、修行走


本日は有給休暇。


昨日のレース


前日は22時には布団に入るが予定通り寝付くことはできず、緊張からこの日は小便が近く23時に起きて、そのあとは寝たのか寝てないのかと思ったら目覚ましが鳴る。
1時30分起床、特大おにぎり一つにぎり2時家出。
今回はセブンでなくファミマでタマゴサンドとホットコーヒーを買って高速に入り、通りたくない首都高を快調に飛ばす。この時間は車も少くなく運転しやすいので、ホットコーヒーを飲みながらタマゴサンドをほおばる余裕がある。
中央道に入り、家から持ってきた餡なしどら焼きを食べながら、ぬるくなっていたコーヒを飲みホッと一息。首都高を抜けた安心感と山梨の街並みの夜景に眼が冴える。
甲府南を降りたのが4時過ぎで、国道を30分を走り駐車場になっている文化ホールに到着。2時間半の道のり。


国道を運転しながら特大おにぎりを食べ腹一杯。あとはスタート一時間前にカロリーメイトまがいの物を摂れば準備はOk、ではない。着いてすぐに大がしたくなり、駐車場の誘導をしているおじいちゃんにトイレの有無を確認する。
この大会どのスタッフも応対が良かったが、このおじいちゃんの言葉は優しく、0℃の寒さも心が温まる。
「おはようございます。トイレはありますか?」
「おはようございます。運転お疲れ様でした。トイレね、この時間は文化ホールは開いてないからシャトルバスで会場まで行かないとないですよ」
「あっ、そうですか。会場まで行かないとないですか」
そう言いながら限界はすぐそこに来ている。
「寒いですね。ご苦労様です」
上から目線で云ってしまった。
車には戻らず辺りを彷徨う。
あった、いい場所が。
まだ暗いのでどこでもできる。


これで準備は整った。


スタートは7時40分。寒いのでギリギリまで控室になっている旅館に居たかったが、なんせ初めての大会なので15分前には並ぶ。
すでに多くのランナーはいたが前から3列に並べた。隣をみたら驚いた。オクム

ㇺ優勝の
y氏がいる。お互いに「あれ~、なんでここに」
今まで何度もレースでお会いし、お世話になったこともあるので心強い。
先週の滑落のあった大会でも途中経過は2位の猛者。来年はスカイレースの日本代表で世界に羽ばたく方だ。
当然、彼は優勝を狙っての参加だが、残念ながら優勝はできなかった。何位かはまだわからないが上位でのゴールは間違いない。


y氏もだがノースリーブに短パンの方が結構いたのには驚いた。ピークは1700mの七面山、氷点下のなかをこれで走ると思うと身体の違いをまざまざと感じる。


レースの中身はざっくりと。
このレース、三つの山を登るが、一番きついと言われている二つ目の山が七面山で1700mまで登る。この区間だけストック使用可能にもなっている。こんなレースは初めてなので少し怖気づいていた。
プロトレイルランナーを含めトップクラスの先週も何人かいる。前にも書いてはいるが年代別表彰もなく、総合3位までの表彰なので漠然と20位内に入れればいいと思ってのスタート。あとはどれだ苦しめてくれるのか。ストックを持たなくて後悔するほどの傾斜なのか。


修行の意味がわかればと。


スタートから登りで久遠寺の境内のなかを走っていく。トップクラスの方々はやはり速い。その中で紅一点、女性が居る。すぐにばてると思いきや速い速い。あとで知ったが今年のハセツネ優勝者だった。もちろんこの大会も優勝。トレイルで女性に負けたのは初めてだ。
境内ではお坊さんの応援もあり、異色の大会というのがここでもわかる。6人のお坊さんが綺麗に並んでて、これでお坊さんの応援は終わりかと思っていたら、200mも走るとまたお坊さんがいる。今度は一人だった。応援の方にはなるべく言葉や手を挙げて応えるようにしているので、このお坊さんにも「どうも~ありがとうございます」と。
お坊さん、私の目を見ながら手を合わせ「いってらっしゃい」と。
なにかあっちの世界に導かれているようで気が重くなる。


その後も登りっぱなしだが林道区間でもあるし走りやすい。登り切ってからの下りはアスファルトでターサージールで正解だった。
最初のエイドで中学生の女の子たちが「大福、饅頭美味しいですよ。食べてください」
見るとまだ誰も食べてないようで、皿には綺麗に大福、饅頭、フルーツが並んでいる。水分だけでパスしようと思っていたが、サービス精神から「うまそうだね。どれをもらおうかな。大福いいね」口に入れて美味いと云おうと思ったら、餅が奥歯の入れ歯に絡みつき外れてしまう。まずい、話せない。ここで入れ歯を外し治したらこの子たちは引いてしまうだろう。そこに無情にも一人の女の子が「美味しいですか?」
話せない。下手に話して入れ歯が飛び出したら引くどころではなくなる。
口をモゴモゴしながら頷くのが精一杯。手を挙げて走り出しながら入れ歯をはめる。
エイド前とエイドを出るときの私の様子の違いに、あの子たちは大福が美味しくないと思って立ち去ったと誤解してないだろうか。


そんなことを引きずりながら最大の難所の七面山に入る。後ろにピタリとつく30代の方が「ターサージールですか?すごいですね」
「ロードも林道も多いって訊いていたので大丈夫かと」
「七面山からの下りはガレ場が続きますから」
これはアドバイスなのか、なめていると思っているのか知らないが「いつもこれでやったますから」
見上げると見覚えのある背中が。
50代で最強だけでなく、年令に関係なくどの大会でも上位常連のM氏ではないか。憧れの方でもあり、私のことも知ってくれているのでマイペースを止めて後ろにつく。後ろの30代の方もついてくる。
「Mさん、どうも~鷹です」
「おい、どうも、鷹さん」
「Mさんもこれ初めてですか?」
「そう、初めて」
「この登りきついらしいですね」
「らしいね」
見るからに余裕そうだ。
「でもMさんはここからですよね」
「いや、俺も歳だよ、もう」
「いや、そんなことないですよ」
会話が途切れたら後ろの30代の方が「Mさんですか?杉本さんて知ってます?50代でいつもMさんには勝てないって云ってます」
「杉本さん?知らないな~」
ペースが落ちたので前にでる。
30代の方が話し続ける。
「Mさん、応援しています」
「ありがとう」


傾斜はきついが山頂まで3,5k、標高1200mを登る。きついがストックを使うほどではない。


M氏と30代の方には抜かれるが焦らない。
M氏の背中が見えなくなるが、30代の方とは一定の間隔で保っている。


降りてくる登山者は30人はいただろうか。誰もが立ち止まって応援してくれる。順位も言ってくれるのだが皆が違う。15位から25位までが多いので20位くらいと解釈する。
「あと半分で山頂ですよ」
ここで半分?身体は余裕でいたって元気。走れるところは走る。それでも半分はパワーウォーク。
気温も低くなってきているから山頂はもう少しだろうか。だとしたら拍子抜けの登りと言わざるを得ない。30代の方とは10mの差をキープしているが、荒い呼吸とときおり「ハアー、ウワー、オー」と叫んでいるように聴こえる。


上から手を叩く音と声が聴こえてくる。
どうやら山頂のようだ。
楽ではないがやはり拍子抜けしたしまった。


スタッフが順位を云ってくれる。
「18位」


予想より良かった。


エイドでコーラを飲み走り出すとフラットで、200m位先にM氏の姿が見える。すぐ前には30代の方もいるが視界には入らない。
ここからの下りでM氏の獣のように駆け降りるのを見ることができる。そう思うと30代の方を抜かしていた。
下りは確かにガレ場が多いが問題なし。しかしM氏は速い。最初の緩やかな下りで離されてしまいすぐに見えなくなってしまった。
長いガレ場区間が終わるとトレイル区間に入る。急傾斜でS字カーブが連続する。気が抜けない。この前の滑落死が何度も頭をよぎる。慎重に集中して駆け降りる。
急傾斜なので下にM氏が見えた。しばらく見ていたいが、そんなことしていたら滑落してしまうので一度だけみて集中する。


この下りも情報では長いと聴いていたが、麓が見えてきてこんなものかと。下りは決して上手いとは云えないが、一度も転ばず一人を抜くことができた。


最後の登りに入る前のエイドでまた大福を食べる。今度は大丈夫、右の入れ歯では噛まずに左で噛む。
エイド出ると30代の方も100m後で着いてきていた。
焦らず急傾斜をしっかり腕を振って走る。遅くとも歩かない。


女性スタッフが「3,5k登ればエイドがあります」
たった3,5k、これを登り切れば9k下って終わりだ。
走れるところは走る。


案内の看板も矢印もない分岐にでくわし、迷って立ち止まる。傾斜の緩い登りを選ぶのは私だけだろうか。右側の緩い方を30m進むがなにか違う気がする。迷ったが戻って右側の急傾斜を登る。大きなS字のカーブを何度も登りながら高度を上げるが、前も後ろも誰も居ない。熊がいつ出てきてもおかしくないコース。心細くなってきて気合の声を数発あげる。
ガーミンを見れば3,5kはすでに登ってきている。やってしまった。間違えてしまった。下って棄権しようか考える。今まで一度も危険したことはないので情けなってくる。立ち止まって上を見上げる。山頂付近はもうすぐのようだ。この時に初めて目の前に広がる紅葉をみて心奪われる。
「も少し上へ行ってみよう」
100mもしないうちにランナーの背中が見えた。
間違っていなかった。


これがわかれば、自分の中でこれでレースは終わった。


このランナーを抜くことはできなかったが、その後も軽快に脚も攣ることなくゴール。


ゴールして何を思うのか。
それを楽しみでのレースだったが、このレースでは何もわからなかった。


山を駆け降り、非日常的なことに身を置き、己を試し、それをやり遂げる。
これで達成感を味わう。
自己満足で修行と云えるのか。


日々の生活、生きていく


これが修行なのか。


修行の日々は続く。


酒行の日々も続く。

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